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新旧司法試験の短答式試験問題を分析し、対応方法を提案します。
ダウンロード元: http://www.moj.go.jp/SHIKEN/shiken00.html
文献名は、すべて略称。参照文献一覧を参照のこと。
下線は、すべて筆者が付したもの。
〔No.14〕 近代選挙の基本原則としては,”當盟挙,∧薪選挙,自由選挙,と詭選挙,ツ樟楞挙の各原則が挙げられるが,次のアからケまでの記述は,これらの諸原則のいずれかについて説明したものである。上記,らイ泙任僚原則のうち,対応する記述の数が最も多いものは,後記1から5までのうちどれか。
ア この原則は,棄権しても罰金などの制裁を受けないことを内容とするが,選挙運動の自由という意味で用いられる場合もある。
イ 有権者が、社会全体の利益という観点から投票すべきだとの立場からすると、この原則に対しては個々人の私的な利益に基づく投票を助長するものとの批判があり得る。
ウ この原則は,元々納税額や財産による選挙・被選挙資格の制限をしない原則として成立したが,現在では人種・信条・性別・社会的身分・教育等による一切の差別を禁じる原則と解されている。
エ この原則は,選挙人の自由な意思に基づく投票を確保するためのものであり,公職選挙法が「公職の候補者の氏名を自書しない」投票を無効にすると定め,選挙人自身による記入を義務付けているのはこの原則の現れの一つといえる。
オ 議員定数の不均衡は,専らこの原則との関係で問題となる。
カ 拘束名簿式比例代表制の合憲性が問題となった事件において,最高裁判所は,投票の結果すなわち選挙人の総意によって当選人が決まることには変わりがないとして,この原則に反するものではないと判断した。
キ この原則について、憲法は地方公共団体の長、議員、吏員については明文の規定を設けているが、国会議員については規定を設けていない。
ク 投票するか否かは有権者の自覚に待つことが望ましいとの考えからすると,職権で選挙人名簿を作成することに対しては,この原則に反するとの批判があり得る。
ケ この原則を重視すれば,選挙の公正を確保するためであっても,選挙犯罪(詐欺投票罪)の捜査のため投票済み投票用紙を差押え等することは許されないことになる。
1.”當盟挙 2.∧薪選挙 3.自由選挙 4.と詭選挙 5.ツ樟楞挙
【解答】
ア 自由選挙の原則。芦部250頁
イ 「投票」を「棄権も含めた投票行動」の意と解すれば、
自由選挙の原則 を説明した記述となるのに対し、
「投票」を「候補者の選択」の意と解すれば、
と詭選挙の原則 を説明した記述となる。
直ちには決しがたいため、判断を留保して先に進む。
ウ ”當盟挙の原則。芦部248頁
エ 自書しないと無効投票となる「自書投票制(投票自書制)」は、
公選法68条1項7号・2項7号・3項9号に規定されている。
芦部250頁は、自書投票制につき次の一文をもって言及するのみである。
「どのような方法で秘密を保障するかは、公職選挙法に規定されている(46条4項・52条・68条・施行令32条等)。」
ともあれ、自書投票制は、
と詭投票の原則 の現れということになる。
オ ∧薪選挙の原則。芦部250頁
カ 拘束名簿式比例代表制は
ツ樟楞挙の原則 に反しないか、が問題とされた(芦部287頁)。
キ ツ樟楞挙の原則。44条・47条・93条を対比せよ。
ク 自由選挙の原則。「投票するか否か」というレベルの原則だから。
ケ と詭選挙の原則。芦部250頁
以上から、
,蓮■韻帖淵Α
△蓮■韻帖淵)
は、2つ(ア・ク)+イ?
い蓮■欧帖淵─Ε院法椒ぁ
イ蓮■欧帖淵・キ)
そこで、判断を留保したイの帰趨(きすう)によって正解が左右される。
クが「投票するか否か」のレベルの記述であることと対比すると、
イは「投票されたとして誰に投票したか」のレベルの記述であると解釈するのが順当だろう。
とすると、
イは、と詭選挙の原則 について説明している記述であることになる。
かかる決断をすると、い「イ・エ・ケ」の3つで最も多くなる。
正解は、4
【分析】
エの自書投票制については、芦部には言及がない。
確かに、公選法の条数が挙げられており、芦部に挙げられた条文は全て目を通すべき(芦部32頁は、公選法を日本国憲法の成文法源として明示している!)だが、公選法68条に目を通したとしても、自書投票制の趣旨までは読みとれないだろう。とすると、芦部だけでは、情報が足りないじゃないか!? やはり、百選の「解説」まで読み込むべきなのか、あるいは基本書を有斐閣兇紡悗┐襪戮なのか!?
−−−否。
エの記述は、前段のみで判断すべきものである。
エの前段「選挙人の自由な意思に基づく投票を確保するため」の原則とは、秘密投票の原則以外にありえない(芦部250頁参照)。
【余談】
某予備校の解答速報に迷いが生じたのは、イの判断ゆえではなかったかと憶測する(当て推量である)。
エについても、芦部から離れると、迷いが生ずる。
有斐閣30頁には、「投票自書制は投票の秘密の制約を招く」旨の記述があり、
百選362頁にも、「自書投票主義から来る秘密投票原理への制約の問題」との記述がある。
つまり、自書投票制は、秘密投票の原則を「制約するもの」であって、同原則の「現れ」ではないことになる。
…とすると、エは秘密投票についての記述ではないのではなかろうか
…投票を自書しないということは他人が介在するということだから、直接選挙の原則の問題か…。
このような「思考の迷走」を始める人こそが、きっと頭の良い人なのだろう。私はそう思う。
しかし、本問は、エの記述内容自体が正しいか否か、を問題にしていない。
ダウンロード元: http://www.moj.go.jp/SHIKEN/shiken00.html
文献名は、すべて略称。参照文献一覧を参照のこと。
下線は、すべて筆者が付したもの。
〔No.11〕 次の文章のアからカまでの空欄に,後記の記述群から適切な記述を入れるとともに,XからZまでの空欄に「合憲」又は「違憲」の語句を入れると,思想良心の自由に関する文章が完成する。空欄に入れるべきものとして正しいものを最も多く含むものは,後記1から5までのうちどれか。
ある選挙に某政党の候補者として立候補したSが,政見放送及び新聞紙上で,「Tは,副知事在任中,発電所の建設に当たり業者から800万円の周旋料をもらった」という無根の事実を公表したという場合に,その救済方法として,Sに対し「謝罪広告」という見出しを付け,その本文として,問題の放送及び記事を引用の上、( ア )という趣旨の文面の広告をSの名前で新聞に掲載すべきことを判決で命ずることが憲法第19条に違反するかどうかが問題となった事案において,最高裁判所(昭和31年7月4日大法廷判決・民集10巻7号785頁)の多数意見は( X )説に立つとともに,判決の強制執行については,特に沈黙の自由についての考え方を示さないまま( イ )とした。
この判決の多数意見は,憲法第19条の良心の自由の意義を明示していないものの,これに賛成する補足意見においては,諸外国の憲法等の用例から( ウ )という見解や,沿革的にはそのような意義で用いられてきたとしても,今日においては( エ )という見解が示されている。他方,反対意見は,( Y )説に立ち,憲法第19条の良心の意義について( オ )という見解を示した。
なお,中間的な考え方を示した補足意見は,判決の履行に関しては,Sの任意の履行を待つべきであり,強制執行については( カ )として,多数意見とは異なる立場に立った上で,判決自体は( Z )であるとした。
【記述群】
a 右放送及び記事は,判決によりTに対する名誉毀損に該当することが確定しましたので,御報告申し上げます
b 右放送及び記事は,真実に相違しており,Tの名誉を傷つけ,御迷惑をおかけしましたので,ここに陳謝の意を表します
c 右放送及び記事は,真実に反しており,Tの名誉と思想良心を傷つけたことに遺憾の意を表します
d 直接強制をすることは憲法第19条に違反するので許されないが,間接強制であれば許される
e 憲法第19条などに違反するので許されない
f この程度のものは代替執行が許される
g 世界観や主義や思想や主張を持つことに及ぶ
h 是非弁別の判断に関する事項を外部に表現し,あるいは表現しない自由を含む
i 信仰選択の自由を意味する
1.アにa,オにh,Xに違憲 2.イにf,カにe,Yに合憲
3.ウにi,アにc,Zに違憲 4.エにh,イにd,Xに合憲
5.オにg,カにd,Zに合憲
【解答】
ア b 芦部144頁(ちなみに「真実」ではなく「真相」と記載されている。)、または百選76頁「事実の概要」(こちらは「真実」と記載されている。)
X 合憲。芦部145頁
イ f 芦部145頁、または百選76頁「強制執行も代替作為として民訴733条の手続によることを得るものといわなければならない。」
ウ i 芦部143頁「諸外国の憲法では、良心の自由は概して信仰の自由を意味する」、または百選76頁栗山裁判官の補足意見。
エ g 百選76頁田中耕太郎裁判官の補足意見
Y 違憲。芦部145頁
オ h 百選76頁藤田裁判官の反対意見
カ e 補足意見は3つしかない(百選76頁「事案の概要」)から、この補足意見は入江裁判官のものを指すと考えられる。芦部には言及がない。同補足意見は「強制執行は許されない」としている(百選76頁)。
Z 合憲。補足意見だから結論は多数意見と一致する。
以上から、
1.アにa,オにh,Xに違憲 2.イにf,カにe,Yに合憲
3.ウにi,アにc,Zに違憲 4.エにh,イにd,Xに合憲
5.オにg,カにd,Zに合憲
となるので、 正解は、2
【分析】
本問も物議を醸した(と思われる)問題。焦点となるのは、( カ )だ。
論理でカ=eと導ける、と主張する人もいるが、それは詭弁だろう。
代替執行を許す原審判決を合憲とする多数意見。それと結論を同じくすべき補足意見が、「およそ強制執行は違憲であって許されない」と言い切るはずはない、と考えるのが論理的だ。
代替執行は強制執行ではないという前提に立つ(?)か、反対意見の立場でなければ、「強制執行は許されない」と言うはずがないと考える方が論理的だ。
だから、本問は知識問題なのである。
学習用の憲法の判例集はかなりあるが、入江補足意見について詳細な引用をしているものは見当たらない。他の過去問の分析で触れるが、「百選掲載の判旨部分だけでは判例学習は足りないのではないか!?」という瞬間的な不安は誰しもが持ったことがあるだろう。しかし、本問から明らかなように、仮に他の判例集に替えたとしても不足感は払拭しきれないはずだ。
むしろ、百選には入江裁判官の補足意見が簡略ながらも掲載されていることに注目すべきだ。芦部その他の体系書でも、入江補足意見に言及したものは、ほとんど見当たらない。百選は「種本」なのである。
もう一点だけ。
百選76頁の入江補足意見引用部分には、こうある。
「『謝罪』とは、…『自発的意思表示』がふさわしく、謝罪広告を命ずる判決もその限度で認められ、強制執行は許されない。」
この部分をしっかり読み込んだうえで、次のように思考を進めた人もいるのではないか?…
…間接強制ならば自発的意思表示と言えるのてはないか…とすると、「強制執行は許されない」とは直接強制が許されないとの趣旨であり、とすると、間接強制や代替執行ならば許されるというのが入江補足意見の趣旨なのではないか…とすると、(カ)には d が入るはずだ…。
最高裁判例の判文は、条文の文言に準ずるものとして扱うべきだろう。理論的に筋が通るからといって条文の文言を勝手に読み変えることが許されないのと同じく、判文の「強制執行」を「直接強制」に勝手に読み替えることは許されない。
【余談】
入江補足意見について言及する学説はそもそも少ないので、受験生が考究する必要はない。
しかし、出題者が判文の原文を元にして問題原案を作成し、かつ最終的な問題文を確定するに際し「種本」の記載から解答を導きうるかどうかチェックしているであろうこと、を窺い知るヒントになると思われるので、以下に入江補足意見の骨子を抜粋してみた。
(ダウンロード元は、判例検索システム。抜粋は筆者の主観に基づく。下線は、すべて筆者が付した。)
「…わたくしは、本件判決は、給付判決ではあるが、後に述べるような理由により、その強制執行は許されないものであると解する。
しからば…上告人は本件判決により強制的に謝罪広告を新聞紙へ掲載せしめられることにはならないのであるから、所論違憲の主張はその前提を欠く…。
…多数説は、…結局本件判決が民訴七三三条の代替執行の手続によつて強制執行をなしうるものであることを前提とし、しかもこれを違憲ならずと判断しているのである。しかし…上告人が、本件判決に従つて任意にこのような意思を表示するのであれば問題はないが、いやしくも上告人がその良心に照らしてこのような判断は承服し得ない心境に居るにも拘らず、強制執行の方法により上告人をしてその良心の内容と異なる事柄を、恰もその良心の内容であるかのごとく表示せしめるということは、…憲法一九条の良心の自由を侵害し、また憲法一三条の個人の人格を無視することとならざるを得ない。
わたくしは、本件判決が強制執行の許されるものであるとするならば、それは憲法一九条及び一三条に違反すると解するのであつて、従つて、多数説が、本件判決が民訴七三三条の代替執行方法により強制執行をなしうるものであることを前提として、しかも本件判決を違憲でないとしたことには賛成できない。
…思うに、給付判決の請求と、強制執行の請求とは一応別個の事柄であり、従つて給付判決は常に必ず強制執行に適するものと限らないことは、多数説の説示の中にも示されているとおりであつて…本件判決が果して強制執行に適するものであるか否かは、本件判決の内容に照らし、更に審究を要する問題であろう。
…そして、本件のごとき判決を強制執行することは、既に述べたように、不当に良心の自由を侵害し、個人の人格を無視することとなり達憲たるを免れないのであるから、…民訴七三三条の代替執行たると、同七三四条の間接強制たるとを問わず、すべて強制執行を許さないものと解するを相当とする…」