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Author:Tatsuya Matsushima
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新旧司法試験の短答式試験問題を分析し、対応方法を提案します。
ダウンロード元: http://www.moj.go.jp/SHIKEN/shiken00.html
文献名は、すべて略称。参照文献一覧を参照のこと。
下線は、すべて筆者が付したもの。
〔No.11〕 次の文章のアからカまでの空欄に,後記の記述群から適切な記述を入れるとともに,XからZまでの空欄に「合憲」又は「違憲」の語句を入れると,思想良心の自由に関する文章が完成する。空欄に入れるべきものとして正しいものを最も多く含むものは,後記1から5までのうちどれか。
ある選挙に某政党の候補者として立候補したSが,政見放送及び新聞紙上で,「Tは,副知事在任中,発電所の建設に当たり業者から800万円の周旋料をもらった」という無根の事実を公表したという場合に,その救済方法として,Sに対し「謝罪広告」という見出しを付け,その本文として,問題の放送及び記事を引用の上、( ア )という趣旨の文面の広告をSの名前で新聞に掲載すべきことを判決で命ずることが憲法第19条に違反するかどうかが問題となった事案において,最高裁判所(昭和31年7月4日大法廷判決・民集10巻7号785頁)の多数意見は( X )説に立つとともに,判決の強制執行については,特に沈黙の自由についての考え方を示さないまま( イ )とした。
この判決の多数意見は,憲法第19条の良心の自由の意義を明示していないものの,これに賛成する補足意見においては,諸外国の憲法等の用例から( ウ )という見解や,沿革的にはそのような意義で用いられてきたとしても,今日においては( エ )という見解が示されている。他方,反対意見は,( Y )説に立ち,憲法第19条の良心の意義について( オ )という見解を示した。
なお,中間的な考え方を示した補足意見は,判決の履行に関しては,Sの任意の履行を待つべきであり,強制執行については( カ )として,多数意見とは異なる立場に立った上で,判決自体は( Z )であるとした。
【記述群】
a 右放送及び記事は,判決によりTに対する名誉毀損に該当することが確定しましたので,御報告申し上げます
b 右放送及び記事は,真実に相違しており,Tの名誉を傷つけ,御迷惑をおかけしましたので,ここに陳謝の意を表します
c 右放送及び記事は,真実に反しており,Tの名誉と思想良心を傷つけたことに遺憾の意を表します
d 直接強制をすることは憲法第19条に違反するので許されないが,間接強制であれば許される
e 憲法第19条などに違反するので許されない
f この程度のものは代替執行が許される
g 世界観や主義や思想や主張を持つことに及ぶ
h 是非弁別の判断に関する事項を外部に表現し,あるいは表現しない自由を含む
i 信仰選択の自由を意味する
1.アにa,オにh,Xに違憲 2.イにf,カにe,Yに合憲
3.ウにi,アにc,Zに違憲 4.エにh,イにd,Xに合憲
5.オにg,カにd,Zに合憲
【解答】
ア b 芦部144頁(ちなみに「真実」ではなく「真相」と記載されている。)、または百選76頁「事実の概要」(こちらは「真実」と記載されている。)
X 合憲。芦部145頁
イ f 芦部145頁、または百選76頁「強制執行も代替作為として民訴733条の手続によることを得るものといわなければならない。」
ウ i 芦部143頁「諸外国の憲法では、良心の自由は概して信仰の自由を意味する」、または百選76頁栗山裁判官の補足意見。
エ g 百選76頁田中耕太郎裁判官の補足意見
Y 違憲。芦部145頁
オ h 百選76頁藤田裁判官の反対意見
カ e 補足意見は3つしかない(百選76頁「事案の概要」)から、この補足意見は入江裁判官のものを指すと考えられる。芦部には言及がない。同補足意見は「強制執行は許されない」としている(百選76頁)。
Z 合憲。補足意見だから結論は多数意見と一致する。
以上から、
1.アにa,オにh,Xに違憲 2.イにf,カにe,Yに合憲
3.ウにi,アにc,Zに違憲 4.エにh,イにd,Xに合憲
5.オにg,カにd,Zに合憲
となるので、 正解は、2
【分析】
本問も物議を醸した(と思われる)問題。焦点となるのは、( カ )だ。
論理でカ=eと導ける、と主張する人もいるが、それは詭弁だろう。
代替執行を許す原審判決を合憲とする多数意見。それと結論を同じくすべき補足意見が、「およそ強制執行は違憲であって許されない」と言い切るはずはない、と考えるのが論理的だ。
代替執行は強制執行ではないという前提に立つ(?)か、反対意見の立場でなければ、「強制執行は許されない」と言うはずがないと考える方が論理的だ。
だから、本問は知識問題なのである。
学習用の憲法の判例集はかなりあるが、入江補足意見について詳細な引用をしているものは見当たらない。他の過去問の分析で触れるが、「百選掲載の判旨部分だけでは判例学習は足りないのではないか!?」という瞬間的な不安は誰しもが持ったことがあるだろう。しかし、本問から明らかなように、仮に他の判例集に替えたとしても不足感は払拭しきれないはずだ。
むしろ、百選には入江裁判官の補足意見が簡略ながらも掲載されていることに注目すべきだ。芦部その他の体系書でも、入江補足意見に言及したものは、ほとんど見当たらない。百選は「種本」なのである。
もう一点だけ。
百選76頁の入江補足意見引用部分には、こうある。
「『謝罪』とは、…『自発的意思表示』がふさわしく、謝罪広告を命ずる判決もその限度で認められ、強制執行は許されない。」
この部分をしっかり読み込んだうえで、次のように思考を進めた人もいるのではないか?…
…間接強制ならば自発的意思表示と言えるのてはないか…とすると、「強制執行は許されない」とは直接強制が許されないとの趣旨であり、とすると、間接強制や代替執行ならば許されるというのが入江補足意見の趣旨なのではないか…とすると、(カ)には d が入るはずだ…。
最高裁判例の判文は、条文の文言に準ずるものとして扱うべきだろう。理論的に筋が通るからといって条文の文言を勝手に読み変えることが許されないのと同じく、判文の「強制執行」を「直接強制」に勝手に読み替えることは許されない。
【余談】
入江補足意見について言及する学説はそもそも少ないので、受験生が考究する必要はない。
しかし、出題者が判文の原文を元にして問題原案を作成し、かつ最終的な問題文を確定するに際し「種本」の記載から解答を導きうるかどうかチェックしているであろうこと、を窺い知るヒントになると思われるので、以下に入江補足意見の骨子を抜粋してみた。
(ダウンロード元は、判例検索システム。抜粋は筆者の主観に基づく。下線は、すべて筆者が付した。)
「…わたくしは、本件判決は、給付判決ではあるが、後に述べるような理由により、その強制執行は許されないものであると解する。
しからば…上告人は本件判決により強制的に謝罪広告を新聞紙へ掲載せしめられることにはならないのであるから、所論違憲の主張はその前提を欠く…。
…多数説は、…結局本件判決が民訴七三三条の代替執行の手続によつて強制執行をなしうるものであることを前提とし、しかもこれを違憲ならずと判断しているのである。しかし…上告人が、本件判決に従つて任意にこのような意思を表示するのであれば問題はないが、いやしくも上告人がその良心に照らしてこのような判断は承服し得ない心境に居るにも拘らず、強制執行の方法により上告人をしてその良心の内容と異なる事柄を、恰もその良心の内容であるかのごとく表示せしめるということは、…憲法一九条の良心の自由を侵害し、また憲法一三条の個人の人格を無視することとならざるを得ない。
わたくしは、本件判決が強制執行の許されるものであるとするならば、それは憲法一九条及び一三条に違反すると解するのであつて、従つて、多数説が、本件判決が民訴七三三条の代替執行方法により強制執行をなしうるものであることを前提として、しかも本件判決を違憲でないとしたことには賛成できない。
…思うに、給付判決の請求と、強制執行の請求とは一応別個の事柄であり、従つて給付判決は常に必ず強制執行に適するものと限らないことは、多数説の説示の中にも示されているとおりであつて…本件判決が果して強制執行に適するものであるか否かは、本件判決の内容に照らし、更に審究を要する問題であろう。
…そして、本件のごとき判決を強制執行することは、既に述べたように、不当に良心の自由を侵害し、個人の人格を無視することとなり達憲たるを免れないのであるから、…民訴七三三条の代替執行たると、同七三四条の間接強制たるとを問わず、すべて強制執行を許さないものと解するを相当とする…」
最初にお詫びをしなければなりません。
7月第1週から、
憲法篇・民法篇
の2本のメルマガを刊行する予定でいましたが、
手続の関係で、7月の刊行は、憲法編だけ となる見込みです。
有言不実行。大変申し訳ありません。
民法篇については、8月第1週からの刊行を期しております。
さて…
メルマガ形式を採用した理由は、2つある。
第一は、内容として出題予想を含むため、完全公開は不適切であること。
受験生はともかく、それ以外の方々の目に留まることは、無用の差し障りを招く。
通常のメルマガならば、とにかく購読者は多ければ多いほどいいわけだろうが、筆者は、少なくとも本メルマガについては、そうは思わない。
テーマが万人向けでないことはもちろんだし、受験生全員の、そして出題者の耳にまで届いてしまうような出題予想は背理ではないか…と思われる。
発行媒体側は、きっといやがることだろうが、購読者は一定の人数に達したら締め切りたい。締め切りがシステム上不可能なようならば、何らかの手段を講じる必要があるが、まだ刊行もしてないのにそれは杞憂というものだろう。
第二は、学習のペースメーカーとして利用できるようにすること。
新旧ともに司法試験は、頭脳の才能を試されるものではなく、「継続」の才能を試されるものである。
試験前7日間で100時間勉強できる人よりも、
試験前1年間で700時間勉強した人の方が合格しやすい。
当たり前のことのようだが、受験生が忘れてしまいがちのことだ。
そうだとすると、pull式の情報提供よりも、push式の情報提供の方が、間違いなく効果的だ。
誰もが意思の強い人ではないわけだからね。
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期間と回数
2008年7月第1週 〜 2009年4月最終週 まで 10か月
約40回
進行順序
【前半の約20回】
総論→人権→統治機構 の順序で、全範囲について、
用語・学説・判例知識 を押さえる。
【後半の約20回】
複合的な問題、判例の論理分析問題、
および特に出題可能性が高いと予測される部分を重点とする。
(後半においても、全範囲を網羅し、遺漏がないように配慮する。)
なお、メルマガ各号において毎回、次回の演習範囲を指定する。
第1回(2008年7月第1週)の演習範囲
「憲法(学)総論」
憲法の意味、立憲主義など (日本憲法史は、除く)
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